富士フイルム株式会社が実現する高次元インクジェット技術

富士フイルム株式会社は、RediJetやMEMS技術を活用した高精度なインクジェット製品を展開しています。AQUAFUZE技術で水性とUVインクの融合も実現しています。画像処理技術で高画質と作業性を両立し、Jet Press FP790など多彩な製品群で産業用途の印字・描画・製造を支援しています。
目次
富士フイルム株式会社のインクジェット技術とは?

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、医療・ライフサイエンス、印刷、ディスプレイ、産業機器など多岐にわたる分野で先端技術を展開するグローバル企業です。
会社名 | 富士フイルム株式会社 |
本社所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3 |
電話番号 | 03-6271-3111 |
公式ホームページ | https://www.fujifilm.com/jp/ja |
印刷分野では、高精度なインクジェット技術の研究・開発に注力しており、独自のインクジェットヘッド技術を軸に、産業用途での高性能な印字・描画ソリューションを提供しています。
◇インクジェットヘッド

富士フイルムのインクジェットヘッドは、長年の技術蓄積に基づいた高度なヘッド設計技術と、最先端の微細加工技術を融合させた製品群です。以下のような革新的な技術が搭載され、安定した高品質吐出を実現しています。
インク循環技術(RediJet 技術)
RediJet技術は、インクがノズル近くで滞留しにくいよう設計されたインク循環システムです。これにより、特に以下のような扱いが難しいインクに対応できます。
- 白インク
- セラミックインク
- 速乾性インク
これらのインクは、ノズル周辺での顔料沈降や乾燥によって詰まりやすいという課題がありましたが、RediJet技術によってノズル周辺のインクが常に循環されるため、最適な吐出状態を維持できます。その結果、高機能インクの安定的な印字が可能となり、装置全体の設計自由度も向上します。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術
富士フイルムは、MEMS技術を活用して、超高精度・小型・高密度のインクジェットヘッドを開発しています。MEMSとは、ミクロン単位の微細な構造や電気回路を形成できる最先端の加工技術です。
- MEMSによって、インク流路やノズルのサブミクロン精度での形成が可能
- 世界トップレベルのピエゾ薄膜技術を組み合わせて、吐出精度を極限まで高める
- 流体制御設計により、インクの流れや飛び方、着弾位置を高精度でコントロール
この技術により、基板上での露光・エッチング・スパッタリング・電極形成といった複雑な工程を重ねながら、微細なインク流路やアクチュエーターを一体化したインクジェットヘッドの製造が可能になっています。
◇インク

富士フイルム株式会社は、独自の素材開発技術と分散技術を応用し、さまざまな用途に適した高性能インクを開発しています。
その中でも注目されているのが、「AQUAFUZE(アクアフューズ)技術」です。これは、UV硬化性樹脂を安定的に水中に分散させる独自の技術で、ワイドフォーマット印刷市場における第四のインク技術として位置づけられています。
AQUAFUZE技術の特徴
- 高機能素材と分散技術を融合:独自のUV硬化性樹脂を水に安定分散させた新たなインク技術です。
- ワイドフォーマット印刷に最適:サイングラフィックやPOSプリントなど、多様な印刷アプリケーションに対応します。
- 耐久性と安全性を両立:高い耐擦性やインク膜の延伸性を備えつつ、印刷中の臭気を大幅に抑えています。
- 環境・作業性にも配慮:揮発成分や臭気が少なく、作業者が安心して使用できるインク設計です。
優れた印刷性能と環境性能
- 低温乾燥による省エネルギー:従来の水性プリントより低温で乾燥でき、CO₂排出量の削減にも貢献します。
- ヘッド詰まり・基材ダメージを抑制:低温での定着により、ノズルの目詰まりや基材の変形を防ぎます。
- プレコート不要の高密着性:プライマーやオプティマイザーを使わずに、さまざまな素材に優れた密着性を発揮します。
- 高い耐久性と加工性:薄い膜ながら傷に強く、トップコートなしでも優れた仕上がりを実現します。
- 優れた安全性:グリーンガード認定、GHSラベルフリーなど各種安全規格に準拠しています。
- 即時加工が可能:印刷直後からカッティングやラミネートなどの後加工が行えるため、作業効率が向上します。
◇画像処理

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、インクジェットヘッドやインクの性能を最大限に発揮するために、インクの着弾から硬化までを緻密に制御する高度な画像処理技術を開発しています。
インクの挙動を微細にコントロールすることで、高速かつ高品位な印刷を実現し、印刷品質と生産性を両立させています。
Rapic技術(Rapid Pigment Coagulation)
Rapic技術は、インクがメディアに着弾した瞬間に化学反応を起こし、顔料とラテックスを素早く凝集させることで、滲みのないシャープなドット形成を可能にします。
- 高解像・高再現性の実現:インク同士の干渉(着弾干渉)を抑え、明瞭で美しい画質を再現します。
- 色域と脱墨性の向上:色再現の幅が広がり、顔料の浸透も抑制されることで、環境負荷低減にも貢献します。
- 欧州で高評価:この技術を搭載したJet Press 720Sは、欧州脱インク工業国際協会「INGEDE」から最高レベルの脱墨性認証を取得しています。
EUCON技術(Enhanced Under Coating and Nitrogen purging)
EUCON技術は、UVインクジェット印刷の画質・効率・安全性を総合的に高めるプロセス制御技術です。
- 下塗り剤の半硬化で滲み防止:インクが滲む前に定着し、ドットの形状を維持します。
- 窒素雰囲気での硬化:UV硬化を酸素の影響を受けずに効率的に行うことで、安定した品質を実現します。
- 画質・生産性・安全性を同時に向上:UVインクの性能を最大限に引き出し、印刷現場の作業環境も改善します。
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富士フイルム株式会社の産業用インクジェットプリンター

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、写真・映像技術で培った精密技術をベースに、産業分野向けのインクジェットソリューションを幅広く展開しています。
◇マテリアルプリンター DMP-2850

引用元:富士フイルム株式会社
DMP-2850は、研究開発向けに特化したマテリアルインクジェットプリンターであり、フラットパネルディスプレイや各種電池、3Dプリントといった分野に広く利用されています。世界中の研究機関に導入されており、その成果として2012年には「プリンタブルエレクトロニクス大賞」を受賞しています。
- 高水準の汎用性と操作性:さまざまな材料に対応し、自由なパターン設計が可能です。
- 経済性に優れる:インクや材料の無駄を最小限に抑え、コスト効率の良い試作環境を提供します。
- FIT技術を搭載:富士フイルム独自の技術により、安定したインク吐出と高精度なパターン形成を実現します。
◇産業用インクジェットヘッド

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルムの子会社であるFUJIFILM Dimatix社が提供するインクジェットヘッドは、ピエゾ駆動方式のオンデマンドタイプを採用しており、産業用途で求められる高耐久性・高速性・高精度を兼ね備えています。
- ワイドフォーマット印刷やエレクトロニクス用途に対応:グラフィックスから機能性材料のデポジションまで、幅広い応用分野に利用されています。
- 製品バリエーションが豊富:代表モデル以外にも多数のヘッドや、開発用サポートツール、アクセサリーを取り揃えています。
- カスタマイズ可能:アプリケーションに応じた柔軟な対応が可能で、システム組み込みにも最適です。
◇Samba JPC

引用元:富士フイルム株式会社
Samba JPCは、富士フイルムの商業印刷機『Jet Press』シリーズで培われたインクジェット技術をベースに開発された、描画ユニット型のインクジェットモジュールです。主にデジタル印刷機の開発用途向けに提供されています。
- 1200dpi・シングルパス方式に対応:高解像度・高速印刷を実現し、短期間での装置開発を支援します。
- 技術のコンポーネント化:Jet Pressのノウハウをパッケージ化し、導入のハードルを下げています。
- 構成のカスタマイズが可能:顧客のニーズに応じて最適なユニット構成が選択でき、柔軟なシステム設計が可能です。
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富士フイルム株式会社の近年の動向

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社はインクジェットソリューション事業において、さらなる技術革新と市場展開を進めています。
水性インクとUVインクの融合技術「AQUAFUZE技術」の開発や、軟包装印刷向け水性インクジェットプレスの新製品投入など、環境性能と高生産性を両立した製品を次々に展開しています。
◇ワイドフォーマットインクジェットプリンター向け新技術の開発

引用元:富士フイルム株式会社
2024年、富士フイルム株式会社は、ワイドフォーマットインクジェットプリンター向けに独自の「AQUAFUZE技術」を開発しました。この技術は、水性顔料インク中に光硬化性樹脂を安定分散させるもので、水性インクとUV硬化性インクの長所を融合しています。
新たに開発されたUV硬化性水性インクは、臭気の抑制や高い耐擦性・延伸性を実現し、室内サインや壁紙用途での活用が期待されています。
◇水性インクジェットプレス「Jet Press FP790」を発売

引用元:富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社は、軟包装印刷市場向けの水性インクジェットプレス「Jet Press FP790」を2024年に発売しました。同社初の軟包装対応モデルで、最大790mm幅のフィルムに毎分50mの高速印刷が可能です。
多品種・小ロット印刷に対応し、白色インクによる高発色や高解像度(1200dpi)を実現します。従来のアナログ印刷と異なり、版不要のデジタル方式で柔軟な対応が可能となり、軟包装分野におけるデジタル化を加速させます。
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産業用インクジェットプリンターは、製品への印字やマーキングを自動化・高速化するための重要な機器です。さまざまな業界に対応するため、各メーカーは特化した技術や製品ラインアップを展開しています。
ここでは、国内で高い実績を持つ代表的な4社をご紹介します。
◇株式会社モリコー

株式会社モリコーは、産業用インクジェットプリンターの開発から製造、販売、保守までを一貫して行う専門メーカーです。
会社名 | 株式会社モリコー |
本社所在地 | 〒152-0002 東京都目黒区目黒本町2-16-14 |
電話番号 | 03-3711-5511 |
公式ホームページ | https://www.morico.co.jp/ |
高性能な印字装置と柔軟なカスタマイズ対応に定評があり、食品や医薬品、化粧品など多様な業界の製造現場で活用されています。印字精度の高さとサポート体制が強みです。
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さらに詳しい情報は公式ホームページでも確認できます。ぜひチェックしてみてください。
◇紀州技研工業株式会社

紀州技研工業株式会社は、「Gマーキングシステム」ブランドで知られる大文字用インクジェットプリンターの国内有力メーカーです。
会社名 | 紀州技研工業株式会社 |
本社所在地 | 〒641-0015 和歌山県和歌山市布引466 |
電話番号 | 073-445-6610 |
公式ホームページ | https://www.kishugiken.co.jp/ |
段ボールや木材、建材などへの視認性の高い印字に特化しており、物流や建材分野を中心に幅広く採用されています。シンプルで堅牢な設計が特徴です。
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◇山崎産業株式会社

山崎産業株式会社は、「テクノマーク」ブランドで各種産業用プリンターを展開しています。小型から大型まで多彩な印字ニーズに対応し、操作性の高いソフトウェアや充実したサポート体制も備えています。
会社名 | 山崎産業株式会社 |
本社所在地 | 〒285-0853 千葉県佐倉市小竹785-6 |
電話番号 | 043-463-0960 |
公式ホームページ | https://www.technomark.co.jp/ |
食品・医薬品・工業製品などへの正確な印字と、ライン全体の最適化が可能です。
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◇アルマーク株式会社

アルマーク株式会社は、ドミノ社製をはじめとした海外製高性能インクジェットプリンターを取り扱う総合商社です。導入から保守まで一貫したサポートを提供しています。
会社名 | アルマーク株式会社 |
本社所在地 | 〒564-0053 大阪府吹田市江の木町19-19 |
電話番号 | 0120-975-191 |
公式ホームページ | https://www.almarq.co.jp/ |
食品、飲料、医薬、化学品など幅広い分野で導入実績があります。トレーサビリティや省メンテナンス性に優れた製品が強みです。
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▼アルマーク株式会社は印字の正確なコンサルティングを実施!導入からサポートまで一貫対応
まとめ
富士フイルム株式会社は、産業用インクジェット技術において高い精度と信頼性を兼ね備えた製品を展開しています。独自のRediJet循環技術やMEMS技術により、白インクや速乾性インクも安定して吐出可能です。
また、水性とUVインクの融合を実現したAQUAFUZE技術や、滲み防止・高解像度を実現する画像処理技術も搭載しました。マテリアルプリンターや高精細描画ユニットSamba JPCなど多彩なラインアップを揃え、2024年には軟包装対応のJet Press FP790も投入しています。印刷品質と環境性能を両立し、印字・描画・製造の高度化を支えています。
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